2016年6月30日木曜日

ンガッパ・イェシェ・ドルジェ・リンポチェの悪霊祓い(6)カルマ・チャクメーのシェードゥル儀軌-その2

まず、司祭は護法尊や守護尊を観想・招来し、助力を請います。そして諸尊に儀具やリンガの説明をします。

このへんの記述はかなり簡略化されていますが、CDの方を参考にすると、かなり長い時間をかけて行われるはずです。

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リンガ、チャンブ、小石を袋に入れきつく縛ります。助手が並べてあった武器を身につけ、この袋を地面に叩きつけます。

司祭は忿怒尊の使いを観想し、武器でシェーを脅し、逃げても無駄であることをシェーに告げ、袋に入るよう諭します。

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そして、袋の中身を三角形の箱ホムクンに落とします。シェーが見事袋に入っていたなら、その時には板はちゃんとした方向で落ちます。シェーに憑かれている故人の性別によって、

・男-倒立して落ちる=捕らえられている
・女-正立して落ちる=捕らえられている

と判断されます。正しい方向で落ちた板だけをホムクンに残し、他の中身は袋に戻され、東南西北に向けて儀式が繰り返されます。

なお、ホムクンは三方が刃物で縁取られ、袋の中身をホムクンに出した際にシェーが逃げられないようになっています。

四方で繰り返してもまだ板が残る場合には、シェーが部屋のどこかに隠れている、と判断され、助手は袋を床に叩きつけながら部屋中を巡り、同じく儀式を続けます。

すべての板がホムクンに収まると、シェーが捕らえられたと判断され、次の手順に移ります。

板はシェーが捕らわれているかの指標となるだけで、捕らわれたシェーはリンガに宿り袋の中に居続けるようです。

ここで板が九枚あることがよくわかりません。祓う対象であるシェーとは、悪霊となってしまった故人ではなく、その人を悪霊とならしめた死神一族九人、ということのような気がします。

二人の男が袋を引っ張りっこしたり、また床に叩きつけたりします。

ちょっと疑問に思うのは、リンガが生地で作られている場合は、叩きつけている間に壊れないものだろうか?するとやっぱり紙に描くリンガの方が一般的なのだろうか?

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司祭は、獣面の四カンドマ གདོང་ཆེན་བཞི་ gdong chen bzhiを観想します。招来したカンドマに四方を守護していただき、次の儀式の最中にシェーが四方へ逃げないようにするためです。

次はドゥー・ラム・チェー འབྲོས་ལམ་བཅད་ 'bros lam bcad 逃路切断の儀式。男たちが武器で袋を打つ真似をし、袋の中のシェーを脅します。

そして司祭はシェーに対し、すでに逃げる道がないことを諭します。四方はカンドマが守護しており、早朝から夜中までいずれの時刻も司祭の化身である鳥獣が見張っており、いかなる方向、いかなる時刻にも逃げ出すことが出来ないことを告げます。

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次はダル བསྒྲལ་ bsgral 処刑。司祭は手に小刀と鎌を、助手はその他の武器を持ち、悪霊となった死者の死因に応じた処刑方法を告げます。

・溺死-毒の大波
・他殺-剣の雨
・矢が当たって死亡-毒の投げ縄
など。

武器をホムクンに戻し、司祭はリンガをプルバで貫きます。四肢を切り取り、四方のカンドマに捧げます(これは紙よりも生地で作ったリンガのよう)。これでシェーの魂は神々の懐に入り、浄化されたことになります。

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司祭は悪霊となった故人のラ བླ་ bla魂を、シェーから取り戻したことになります。故人の魂を供養し、シェーの被害にあった人々のお祓いも施します。

これでシェードゥルの儀式は終了です。

記述はありませんが、招来したカンドマにお帰りいただく儀式も当然執り行われるものと思われます。

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