2016年8月1日月曜日

ンガッパ・イェシェ・ドルジェ・リンポチェの悪霊祓い(13)Nebesky-Wojkowitzが報告するゲクトル

・René de Nebesky-Wojkowitz (1996) ORACLES AND DEMONS OF TIBET : THE CULT AND ICONOGRAPHY OF THE TIBETAN PROTECTIVE DEITIES. xvi+666pp.+pls. Book Faith India, Delhi.
← Original : (1956) Mouton, Hague.

には、ゲクトル བགེགས་དཀྲོལ་ bgegs dkrol(厄・悪霊祓い)という儀式が紹介されています。

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これはカルマ・チャクメー/イェシェ・ドルジェ・リンポチェのシェードゥルに近いもので、病気の原因をゲクによるものとして、これを祓います。

ただし、この儀軌を行うのはトランス状態になったシャーマン、つまりラパ ལྷ་པ་ lha paです。その点では、司祭が正気を保ったまま神々の力を借りて、悪霊を祓うシェードゥル系儀式と異なります。

ラパがトランス状態になり、剣(おそらく刃でない面、あるいは鞘に入れて)で患者の体を打ち、ゲクを追い出します。

ここでラパに憑依するのはテウラン ཐེའུ་རང་ the'u rangというクラスの精霊とされます。こういった精霊の分類はなかなか難しく、テウランも悪霊となる場合もあれば、人間の味方をしてくれる場合もあります。

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Nebesky-Wojkowitz (1996)は、ものすごい本で、チベットの護法尊やシャーマニズムについての情報の宝庫なのですが、大部すぎて私は全然消化できていません。今まではちょちょこ拾い読みする程度。いつかがっちり取り組まなきゃいかん本。

この本には、悪霊祓い・厄祓い系統の話題が他にもかなりあるので、まとまったら追記しときます。